坂
坂を下りながら考える
答えの出せないあれこれ
ぼんやりと迫りくる YES/NO
一歩ずつせり上がる街
視界の隅に追いやられる空
さざめきが耳たぶを染める頃
わたしは街に均されている
坂を上りながら考える
答えは出さなかったあれこれ
なんとか逃げ延びた YES/NO
いつまでも打ち寄せる街
視界の縁から降りてくる空
安堵と後悔が絡まるドアを開けて
わたしはそそくさと家の一部になる
父親は高い所に住みたがった
そして大の引っ越し好きだった
わたしはいろいろな坂の
それぞれの傾斜角に促されて
とりとめもなく考えてしまうのだった
わたしの悪癖は今でも治らない
相変わらず坂を下って上って考えるが
導かれる答えはいつだって
極めてYES寄りのNOもしくは
限りなくNOに近いYESだ
コメント
作者の息遣いが聞こえるようで、うふふとなりました。
勾配が人々の距離を離したり近づけたりもするのかな、と想いました。
たちばなまこと さん
>ありがとうございます。
学生だった頃の微妙な親子関係と己の愚かさを想い出しながら書きました。
timoleon さん
>ありがとうございます。
時として坂は記憶と想いをつなぐ懐かしい通路のような気がしてくるのです。