図ほど、凡ゆる物事の細部に入り込んでいるものは、あるまい。家系図、人体解剖図、外側から個人の内部まで、物事の凡ゆる仕組みを表すのが、この図である。
「なんだ、この野郎図に乗りやがって」
「図々しい女だなぁ、お前は」
人が調子づいた時も、この言葉を使う。
「調子こむ」
と言う言葉が一時期、流行った時期があった。私はこの調子がこむと言う言葉の響きに、かねがね疑問があり、不思議な言葉だなぁと思ったものだが、この言葉をよく使っていた兄が先日少し就職が上手くいかないくらいの不満で、放火を起こし、逮捕された。
同級生のヤクザの息子、市毛君もこの調子こむと言う言葉をよく使っていたが、高校に上がった頃、中学以来、髪を緑色に染めて女の子と手を繋いで『少林サッカー』と言う映画に並ぶ市毛君を見た。この、調子こむと言う言葉を市毛君が使う時、良く顎を前に突き出し、口の先を前に尖らせ、左肩をすくめて右肩を上げくねらせ、首を斜め上に回し、人を舐め回すように見ながら
「調子込んでんじゃねえぞ、このヤロー」
と言っていた表情を思い出す。市毛君は『だっちゅ~の』が流行った時、真っ先に教室の中で机の上に乗っかり、自分のおっぱいを突き出して様々なシチュエーション物事に合わせて『なんとかだっちゅ~の!』と言うしょうもないギャグを披露して学校で人気者だった。
私の兄も就職に不満があって私の物を壊し、売り飛ばしたり放火したりしたが、自分を買い被っていたのだろう。今時ネットで検索すれば余程のことがない限り仕事だって見つかるし、私のように生活保護を受けて生きることだって出来る。本当に図にのっていた。調子込んでいたのはどっちだ? と言いたくもなるものである。

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コメント

  1. 図とは漠然とした現象にリアリティを与える方法である。兄と市毛君の逸話は詩にリアリティを与えるものであり読直後に図となった。

  2. ありがとうございます。設計図、世界地図、構図、小から大、内面から外面、内側から外側に至るまであらゆる物事に図があります。教室の匂いだったり、そういうものが伝わってくるリアリティのある表現を大切にしています。

  3.  はじめまして。初めて、短いコメントを失礼致します、リリーと申します。 
    他にも作品を拝読させていただきました。どれも私には…ダイレクトに響いて
    くる力強さを感じました。
     荒川様の詩を、興味深く今後も拝読させていただきたいと思っております。
    どうぞよろしくお願い致します。m(_ _)m

  4. ありがとうございます。筆圧が強いです。負けん気だけは人一倍。リリー様の詩もまた拝見させて頂きますね。
    よろしくお願いいたします。

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