裏路地
裏路地、提携する眼
蔓延る窓
分裂する窓
その狭間で女は窓を拭き続ける
手にしたウエスは適度な温度を保ち
それはまた彼女の無口だった
無口の中には一人の海がいる
私と私たちはかつて
その海と会ったことがある
海は灰色の社屋の壁に
斜めにもたれ掛かり
重く深くうねっていた
裏路地では夏が澱んでいた
異臭を放つ吐瀉物は
もはや言葉ではなかった
その時女は自分の眼を拭いていた
眼はすべて窓で出来ていた
窓の内側には内など無く
彼女の外が広がるばかりだった
ある晴れた日、私と私たちは
女を見ていた
ふとした理由で世界中から窓がなくなった
それでも窓を拭き続けていた
夜中でもないのに
腕や手を振り払われ
私と私たちは慌てて
裏路地に住む幽霊の話を始めた
コメント
まだ始めていませんが解読したい誘惑に駆られる詩です。
@たかぼ
たかぼさん、コメントありがとうございます。自分としてはたどたどしい文章になってしまったかな、という気がしますが、これも修練だと思って書くようにしています。