蝉の内臓

もちろん蝉のオスは
何も持ってはいない
からっぽである
それは声をひびかせるためである
しかしからっぽであることは
悲しくはないのだろうか
愛はきょうもからっぽである、だから
女たちは美しい
愛することはからっぽであるから
そのまま夏のすべての時間は解放されている
それは銀河の距離のように
ひとつの法則として理解してもよいのだ
神がわたしを愛しているように
この世界のすべての植物はからっぽである
そのセルロースはいつくしみ
その細胞膜はヒンズーの神々である
生み出す者と破壊する者
それは蝉の内臓のように
たくさんの血を噴出させる
けれどもわたしの手はよごれない
惑星が西の空にかがやく
女たちが全裸で飛翔する
声はとどくのだろうか
全力でわたしは鳴く
胸の中はからっぽのままで
美しい夏の音楽である
死の匂いの音楽
である。

投稿者

岡山県

コメント

  1. 音楽には空間がひつようなんですよね。バイオリンの類や管楽器、パーカッションなんかを思い出します。蝉は楽器なんだなー。
    裸の飛翔、蜃気楼みたいな感じと想像しました。美。

  2. @たちばなまこと
    さんへ、暑い日がつづいていると、なにやら飛んでいる、このあたりの木には、裸の女や、裸の男が、しがみついている、口々に呪文のような、音楽を。

コメントするためには、 ログイン してください。