岸
あなたは対岸にいる
わたしたちの間には
橋がかかっている
いつものように
一番高いところで落ち合い
あなたと物語を読む
読んだことのない物語だ
どちらかが持ち帰り
順番に書き足しているのだ
互いの瞳のなかに
知らない揺れ方を見つける
足元が暗くならないうちに
わたしたちはそれぞれの岸へ戻る
向こう側に
渡ってはならない
足を踏み入れてはならない
きらきらしているが
そう見えるだけだと知っている
あなたは
私の知らない誰かと
読み終えた物語を
繰り返し読んでいる
それを読んでみたいと思うが
つまらないと知っている
コメント
互いの瞳のなかに
知らない揺れ方を見つける
このフレーズ、いいですね。
本作品のテーマである「物語」と絡み合い、
ちいさな、
でもたしかな違和感を醸しています。
…何かが、違う。
ありがとうございます、橋の上で読む物語はどっちかが書き加えないと終わりですが、あなたが対岸で読んでいる物語は終わりがないのです…