スストアで
剥がれた分度器を
落ちている人のように
並べていくみたいに
拙い息継ぎが
街の柔らかいところに
終わっていくみたいに
コンビ、ニエン、スストアで
スストアで
淡い方の手を近づけて店長は
小鳥を飼い始めた
美しくて知らない名前を付けると
スストア、それだけで
開いててよかった
週末がある夏の日に
交差点は作られていく
ここでは何も釣れない、と
空色の子供たちが
スストアで
銀行強盗の相談を始める
悪いことをしていなくても
許されないことに傷つく時が
いずれ来るというのに
スストアに吹く風が
スストアに笑う風が
スストアに息絶える風が
山手線の吊り革を揺らして
また風になる
店長はバックヤードに入ったまま
行方不明になってしまった
わたしは待ちながら小鳥と暮らし始める
最初から店長は
小鳥だったのかもしれないと思う
スストアの咲く庭で
わたしたちは愛を
語っていただけなのかもしれないと思う
コメント
やっぱり、たもつさんは上手いなあって思います。コンビニエンスストアってことばを耳にするたびに、ぼくも感じてました。「スストア」部分の、なんとも言えない引っ掛かり感。そこを起点にして、ここまでイメージを飛躍させられるのは、やっぱりさすがです。
@大覚アキラ
大覚アキラさん、コメントありがとうございます。大覚アキラさんが同じ感覚を持っていたこと、同士が見つかり安心しました。ひっかかりますよね。コンビニエンスストア、暗唱していると変になりそう。
今後 コンビニに行くたびに、「スストア」という言葉が 頭によぎりそうです。いままでは「コンビニ」だったのに。鳥の声みたいな響きだと感じます。
いったい名付けるわたしたちは、鳥の声をすこしは聞いているのだろうか、子供達が去ったあとで、地面には、鳥の声が染み込んでいる、そそそれを、ただそそそれを、てなてなづけて、けなけなととり、ててなりててなり、そなそなわれわれそ・・・。
@るるりら
るるりらさん、お久しぶりです。コンビニに行くたびにスストアが頭をよぎる呪いをかけておきました 笑
@坂本達雄
坂本達雄さん、コメントありがとうございます。名付け、ある意味、人間の勝手ではありますよね。以前、ある方の詩で、ちくわぶを題材にした名付けの詩を読んだことがあります。名付けは、もしかしたら自然界にはない人間の罪かもしれません。
たけだたもつ 様
どうしてこんなに刺さるんだろう
本当に、好きですね
説明とかは、出来ません。
@wc.
wc.さん、コメントありがとうございます。
私も好きなものは好きとしか言いようがなくて、なかなかコメントがつけられなくて困っています。
ありがとうございました。