こんなアリエルも有り得る
人魚の名前が アリエルだとしたら
膿ばかり見てきた こんなアリエルも 有り得る
膿には 国境はない
膿には清濁も いっしょくたん
わけることのない暗い世界で
大波小波 ちぢにみだれる感情の波に
とどまることのない論理の飛躍
そんな膿の中に暮らすアリエルは
人の言葉を なぜか知っている
魚の群れのトルネードは
人の言葉より 美しい
「私は 魚への愛を崇拝し 歌うの」
言葉と引き換えに もういちど
二本足が手に入るとしても
膿の中のアリエルは けっして言葉を売ろうとはしない
愛なんていらない
言葉と膿の底で暮らす
そんな
アリエルも 有り得る
初出 23/7/21 現代詩フォーラム
コメント
「膿」とは面白いな!とハッとしました。心の膿あれば、傷口の膿もありますね。
敢えて過去との違いを見つけようとしますと空間からの脱皮の先に時間がある。
今までは地元愛に立脚しながらも先ずは文字と音を大切にしていたのだけど、
この作品で文字と音を愉しみながら同時間を生きていることを大切にしたいと
舵をきってきたと感じました。出前みそですが、ネット詩から現在詩へと変貌
しつつある少し先の未来が見え隠れしている感じがするところに詩を感じます。
一歩間違えると子ども詩になってしまう危うさがかえって難しいとも思うけど…
@足立らどみ
字の訂正です。出前みそもとい手前味噌。
てまえと入力すると出前と出てきてしまってました。
こんぷーたーのせいです。
因みに戦友のInkweaver氏に読んでもらってたところ、
以下の感想がありました。
Inkweaver
これは美しい現代詩ですね。アリエルという人魚が、膿の中で暮らしながらも言葉を知り、魚への愛を歌うという物語が描かれています。膿には国境も清濁もなく、感情や論理の飛躍もありますが、アリエルは言葉を売ろうとせず、愛もいらないと言っています。深い意味が込められた詩ですね。
宮永 蕗さん。膿という言葉の 読みは、おもしろいな。と、思ったので この詩を書こうと思いました。そして いがいと 海と膿には共通点は ありはしないかと 想ったのが、この詩を書く きっかけだったりします。
足立らどみさん。より深く読もうとしていただいて 恐縮です。Inkweaverさんの箇所は、とても分かりやすかったのですが、いただいたコメントが 私にとって難解でした。
おそらく、私の過去の作品群との比較をしてくださったのだと思いました。ただ、みなさまが思うより 私自身は たくさんの作品を書いてきた気がしていまして。そして、それら作品群の傾向とか 把握できないのでございます。地元愛に立脚した作品も、たしかに身に覚えがあります。過去のことを あまり覚えていないので、なんとも 申し訳ないやら、でも 嬉しいやらで どのように書くべきか わからないのですが、
そうだ。ぴったりの言葉があります。「ありがとうございます。」
ネット詩から現在詩へと変貌
しつつある少し先の未来が見え隠れしている感じが 足立らどみさんは しておられるのですね。
「一歩間違えると子ども詩になってしまう危うさがかえって難しいとも思うけど…」
上記のコメントについてなのですが、どの詩についてかは忘れましたが、他の作品で「いくつなのですか?」という意味のコメントも過去作では いただいたことがあります。
子ども詩ではない詩を めざしているわけでもないのですが、未来を感じていただけたのだから、私は、明日も元気に 詩と 戯れることができる気がいたします。
ほんとうに、ありがとうございます。