砦
今にも泣き出しそうな新宿の目が
物憂げな濁りと闇と原色を視神経に伝播する
閉ざされてはいない
汗つたう細い首にも風が吹いている
都会の交通が夕暮れの漣のよう
ビルの内らへんから笑い声が響く
おまえらも来たか
向こうの方で子どもらの声がする
おお、おまえらも来たか
パッキパキにそびえ立つのは東京都庁
そして僕らは守られる
東京都最高のかっこよさ
猛暑の中で僕の頭は軽くストーン
東京都最大の冷たさ
鏡ばりの壁にも僕らは映らない
丹下さんよ
あんたの要塞が夕焼けに抱かれているよ
東京都最大のあったかさ
柱に仔犬が小便をひっかける
だけど微動だにしない
きめ細やかに質実剛健に凛と立つ
最上階ではそんなことを知ってか知らずか
人々はその他の東京をいい気に見下ろす
その他の東京を
東京都庁 僕はおまえだけを見上げる
東京都庁 僕はおまえだけをリスペクトする
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