六つのこと
一
散歩をする
腕時計の竜頭をねじってぜんまいを巻いておく
六時零分のころ
あいさつをすると
忘れていたことがぐうぜん戻ってきて
あいさつをする
二
そよそよ風は
光を通り 思い出す
むかしの傷は
心を通り この大切な悲しみと
わたしは
この道を通り 帰る
三
深く青いインクは愛用万年筆の心臓を通って出てきて
つやつやとした愛用万年筆が
しゅるしゅると言葉を しるすと
ノートの紙は青い文字でみたされていき
わたしの魂が紙に定着する すると
わたしはもうここにはいない
四
わたしの墓石に春の雪が
ぴたんぴたんとして
耳はかたむいてつめたく
つめたくかたむいて視線は
宙へ泳ぐ
けれどもおちつくように目をつむる
五
わるいことも
いいことも
ここにあるから
半分位 影の月へ
ほほえむ
半分位 あなたに映るわたし
六
昨日のことよりも
明日のことよりも
今日のことだ
と誰かが言った
誰かのわたしは今日も
命に命を支えられている
コメント
言葉一つ一つが濃密に、言い聞かせるように、日々を何度も咀嚼するように響いてきました。三が好きです。詩人すべてが腑に落ちるでしょうね。
トノモトショウさんへ この詩からあなたさまへそのように響いたことを私にお伝えくださいまして、貴重に思います。三が好きと言ってくれて、ありがたいです。
私は手首のけんしょう炎が治ったので、20年間愛用していた万年筆は洗浄して今は保管してあります。今は、主にパイロット社のシャーペンで詩作などをしています。
すてきなご感想をくださいまして、ありがとうございます。
六つの小品ですね。作者自らの心象、もしくは内省を、かみしめるように表現されています。四が印象に残りました。「私の墓石に」「けれどもおちつくように目をつむる」。
長谷川さんへ かみしめるようにこの詩を読んでくださいまして、ありがたくうれしいです。四が印象に残ったとのこと、うむ。長谷川さんが、そのように感じたり思ったりしたことを私に伝えてくださいまして ありがたく貴重に思います。ありがとうございます。
詩情を感じます。ダイナミックってことなくて静かな中にも。僕は二が好きですね。
りゅうさんへ そのように詩情を感じて、しかも静かに感じてくださいまして、ありがたいです。りゅうさんは、二が好きと言ってくれて、そのことを作者に伝えてくださいまして うれしいです。そうしてご感想を伝えてくれるということも貴重です。ありがとうございます。
昔の傷は心を通る
それはそれは大切なものです
素晴らしい詩です
ありがとうございます
那津さんへ 大切に読んでくれて この詩の思いを大切に汲んでくださいまして ありがたくうれしいです
そして 素晴らしい詩と言ってくださいまして こちらこそ ありがとうございます
ぼくも三がいちばん好きかな。何度も読み返しました。とても好きな感じです(語彙力
作者の静かな心の 在りよう が、伝わります。
あまねさんへ あまねさんも三が好きと言ってくれた♪ 何度も読み返してくださいまして、しかも とても好きな感じと言ってくれて、とてもとてもうれしくありがたいです(語彙力)。ふふ。ありがとうございます。
剛さんへ この詩の、そして更に奥の作者の心の静けさを読み取ってくれまして、とてもありがたいです。しかし、私の普段の心は、ノイズが多いのですよ。ふふ。まあ、ノイズが多いからこそ静けさを求めるのでしょう。一人で静かにしていることが好きな私です。でも、剛さんが私のこういう静けさを感じたり思ったりしてくれたことを貴重に思います。ありがとうございます。
とてもアナログで好きな感覚で好きな言い回しで好きな詩情です。つまり私はこの詩が好きです。
四五六が面白かったです、全てに断定的でなく余裕があって、あそびがあって、余白があって、その中で「わたし」自身さえも不確実な存在であったり、どこまでも客観的というか、今日のわたしは、そう感じました。
王殺しさんへ ああ、そうなのですね!アナログという作者には分からないことを私に伝えて教えてくださいまして、ありがたいです。そして、この詩をさまざまに好きであると言ってくれて、うれしいし貴重に思います。んん、うれしい。ありがとうございます。
timoleonさんへ 四五六が面白かったとのこと、ああ、そう感じてくださいまして うれしくありがたいです。
うむ。そのように さまざまに感じて頂いてこの詩を汲んでくれたことが とてもうれしい!
その時その時のこころの状態で詩の姿もある程度変わって見えることがあるでしょうね。
すてきに読んで頂いて貴重に思います。ありがとうございます。