私もヒトだった

あなたへ
「ありがとう」
最後にそう言えるか
分からないので
今の内に言いました。

宇宙の角の
霊園にある墓石の
冷たい艶が
青白い顔をしている
私だ。遠い

優しい噓の「嘘」の字の
向かって右側の部分を除いて
おしゃべりをする口が
いずれ 沈黙をする
沈黙するしかなかったのだった

地球というとっても小さな星の上で、
生まれて生きて死ぬ ヒトも。空の下、
泣いて笑って無表情 ヒトは。
私もヒトだった。
ヒトは一体何を
求めたり目ざしているのだろうか

鬼やんまが水辺を飛んでいる
鬼やんまには
自分の道がある
自分の空中の道を
鬼やんまは行ったり来たり
るんるんだ。
空の雲がまぶしい
お墓参りが済んで
お盆が過ぎた夏
鬼やんまは林の陰へすぅと消えた

投稿者

コメント

  1. 重たい作品だ。読者として救われたのは最終連で
    鬼やんまが現れたことで、そのあと空の雲をみて
    ひろがりを示したあとに、鬼やんまを送るところに
    作者の最後の気持ちが込められているように感じる。

  2. 一連目の潔さが好きです。
    ヒトも鬼やんまもこの小さな星の上で、ただただ生きましょうね。

  3. @足立らどみ
    らどみさん コメントありがとうございます。
    この作品を、重く読んで受け止めてくれたことを貴重でありがたく思います。らどみさん、ありがとうさま。
    うん、あまりその作者が自作を説明するのはひどく野暮なことなんですが。。一つここで言えば、鬼やんまの鬼は鬼(亡霊)なんですよね。ふふ。
    そうですねぇ。らどみさんが言ってくれた通り、その鬼やんまを見送ることで、ヒトだった、とね。うん。まあ、そういうことです。感じてくれて、ありがとう。

  4. @あぶくも
    あぶくもさん コメントありがとうございます。
    ああ、あぶくもさんが、一連目を潔くて好きと言ってくれて、とても嬉しいです。あぶくもさん、ありがとうさま。
    うん、私の場合、言いたいことは出来るだけ、詩で言うようにしています。これが悪いことなのかいいことなのかは、読者に任せます。でも、そうするしかないから、そうして書いて発表してるんですけどね。
    ヒトも(実際の)鬼やんまも、生きていますね、一所懸命。
    鬼やんま好き。この間、自分ちのお墓周りの草刈りと掃除をしていてその休憩中に何度も鬼やんまが目の前を行ったり来たりしたり、墓石の一体にとまったりしてました。お墓のすぐ近くに30センチ位の幅の小川が流れてるんです。その小川でとんぼの幼虫のヤゴが居ました。まだ少しは、この辺には自然が残っています。ふふ。

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