夜のプール

夜のプール

夜のプールで
水音だけ響かせ
泳いでいたのだ
足がつって
息苦しさに気が遠くなる
魚になりたかった

暗い水底どこまでも落ち
全ての境界があやふやになる
開放は絶望のかわいい双子
僕はだから水底を泳いだ
ターンしてまた掌が水を掴む
静寂の抱擁
どこまでも浮かぶように沈んでいく

やがて魚は冷え切った月と会い
ねえ、少し休んでもいい?
疲労で痙攣する背鰭を脱ぎ捨て
凍るような眠りに落ちる
捨てられたそれは虹色の夢だった
夜のプールにて

投稿者

岩手県

コメント

  1. 解放と絶望が裏表であることを語れるのが、すごいと思います。

    この詩に描かれている位の疲れが世の現実にあることを思い、考えさせられます。

  2. 夜のプール、興味深いテーマですね。詩のテーマはさまざまなところに潜んでいます。魚と月との出逢い。ちょっと艶っぽい…。

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