23階

高層ビルと空の境界線上で
雨に濡れて滲んでいく赤い光
その点滅と同じ速度で
揺れる身体と揺らされる身体

明けない夜はない
なんてことを
訳知り顔で語るやつらが
絶対に辿り着けない静かな部屋で
東京を見下ろしながら
いろんなものを交換しよう
なにもかもぜんぶ交換しよう
きみがぼくになって
ぼくがきみになってしまうまで

空調の小さな唸りが奏でる通低音
月夜の砂漠みたいに真っ白なベッド
ボトルに半分残ったランブルスコ
分厚いガラス窓にはじける雨音
不安定に連続する甘い呼吸

ここが牢獄でもいい
むしろ
牢獄であって欲しい

これがゲームなら
いまここでセーブしたい
もし取り返しがつかなくなったら
ここからやり直したい
いつかダメになってしまったら
またここからやり直したい

朝が来たら
コンティニューしよう
終わらない夜はないかもしれないけど
終わらないゲームはあるってことを
教えてあげるから

投稿者

大阪府

コメント

  1. この詩から、冷酷な優しさ、のようなものを感じます。そこにひかれます。

    個人的なことでなんですが、時々だけど人生はゲームだと思う時があります。つらい時などに人生はゲームだと思うと、気が少し楽になり少し前に進めるので。

  2. @こしごえ さん
    人生はゲーム、と聞くと南佳孝の「スローなブギにしてくれ」を真っ先に思い浮かべてしまう世代です(笑)。
    たしかに人生にはゲームのような一面があると思いますが、ぼくにとっては「戦い」とか「旅」とかの方が比喩としてはより近しいように感じます。

  3. こんにちは。大覚アキラさんの言葉のセンスがぎっしりと詰まっていて、読み応えありありですね。アキラさんは本意ではないかもしれませんが、お洒落、なんだよな。
    ペラペラの上部だけのお洒落ではなくて、時折顔を覗かせる泥臭いところと含めて生きる考え方がお洒落。

    いろんなものを交換しよう
    なにもかもぜんぶ交換しよう
    きみがぼくになって
    ぼくがきみになってしまうまで

    ここ、大好き。

  4. @たけだたもつ さん
    誤解を恐れずに言うなら、ぼくは自分の詩を「落書き」だと思っていて、落書きだからこそ可能な限りナイスなものを書きたいと思っています。センスとかお洒落とか、そういう言葉で評してもらえることは嬉しい反面、照れくさいですが、ありがとうございます。

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