山崩し

夢のなか
よく知った砂浜で
きみとぼくは山崩しをしている
まあたらしい
Tシャツと短パンで

雨にも風にも負けなさそうな
若い流木を二人で選んで
深く刺した

順番に
きみ
ぼく
きみ
ぼく
なくならないから、もっと取れよって
笑ってる
考えてることは
目配せしたらわかる
おくびょうだな
きみこそ
ぼくこそ

落ち葉が混じって
雪が降って
桜の花びらが舞っても
夢中で続いた

絶対なくならないから
大丈夫
倒れたらおしまいだ
負けたくない
負けさせたくない
勝ち負けの意味がわからなくなった
なんでこんなこと
始めたんだろう
なんのために
意地でも続いた

5時だー
近くの小学校から町内放送がかかる
良い子は帰りましょう

はっとして
二人
手を止めた
山なんてもうなかった
周りはぐるっと深く深くえぐられて
流木は渇いて
わずかの砂に支えられていた

じっと見てた
どれだけ見ていただろうな

こて、っと
思い出したように
倒れた

引き分けだ

お互いの顔
どんな顔で笑ってたのか
泣いていたのか
見れなかった
自分でも
自分がどんな顔してるのか想像もつかない
もう見ることもないだろう

背を向けて
逆の方向に
まっすぐに歩いていく

投稿者

東京都

コメント

  1. 男どうしの友情って、こんな感じかもしれません。
    いくつになっても子どもみたい遊んでしまう。
    そんな夢から覚めた時に訣別するのかもしれない。

  2. パターン2

    「偶然」

    手持ちぶさたで
    あなたとわたし
    砂山を見つけたので
    山崩しをすることにした
    ずっと昔見たような流木を拾い
    まっすぐに立てた
    もう何年もしてないね

    本当は
    いっぱい掬いたかったけど
    少しずつ
    慎重に

    もう
    倒しちゃっていいよ
    辺りは真っ暗で
    どうなったのかも
    わからなかった
    波が跡形もなく消してくれたから
    数時間後には
    いつもの朝がくる

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