思い出のコメディ

老婆の隣をただひたすら歩く
そんな仕事があった
老婆はたいへんに知恵のある人で
そのため一階のおじいさんにとても恨まれていた
老婆にはパトロンがいて
足回りの綺麗な車が
いつも停まっていた
老婆は毎週さまざまな病院に行き
それぞれの主治医の前で
自分でも見分けがつかなくなった嘘で
立ち振る舞い
そのため老婆は病院もタクシーも
(タクシーは一部
付き添いも買い物も
全てが無料で
毎日スーパーや百貨店で一番高い肉を買い
その半分以上を愛猫に与えていた
白とピンクを愛し
付き添いを連れた
老婆が歩いていると
一階のおじいさんが
雄叫びを上げながら
電動車椅子で体当たりをし
警察と救急車がきて
救急車で運ばれ
義歯が新しくなったらしい
付き添いは
警察署によばれ
2時間一緒に調書を作成
1ヶ月ほど 1週間に一度
空いた時間を警察に伝えて
ソーシャルワーカーと一緒に
警察署3階の畳の空間で
現場の再現をしたけど
1ヶ月後くらいに
検察から書類送検するから
裁判所へ来て話を聞かせてほしいとの依頼は
丁重にお断りした

その後
契約不履行だけは避けたかったから
もっと上の上司が
老婆のところへ出向き
2時間ほど頭を下げ
めでたく契約解除となったが

ふと
電卓を叩いてみて
医療は分からないから
障がいと介護その他を計算してみたら
市区町村が負担していた毎月の金額は
タクシー代含め
ゆうに100万円をこえていて
どうにも働くことが馬鹿馬鹿しくなるけれど
週末は子供のはじめての運動会で
一緒に走らなきゃいけないとこがあるから
最近ずっとサボっていたウォーキングの成果を
見せてやりたい

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