夏の予定
観葉植物に餌をやり忘れて
餌はやらなくていいんだよ、と
言葉で教えてくれた人がいた
階段のよく晴れた踊り場のあたりにも
エタノールの匂いがしていて
その間、何本かの準急列車に
乗り損ねてしまった
仕方なくその滑らかな付箋の質感を
爪で剥がすしかなかった
日々の生活を見渡せば
このように剥離していくものは
常に身体などの近くにあり
子供の頃、人と人の隙間に
はぐれたこともあったけれど
どこかで線引きをしなければ
多分あのまま全部
子供であり続けた
上席に夏の予定を聞かれ
特に隠すつもりもなく
雨に溶けていく海の泡沫を思いだし
薄っすらと伸びていく砂の陰影や
誰にも知らせなかったフナムシの亡骸が
懐かしく感じられた
観葉植物についている外国語の名前を
ひとつずつ覚えていったように
命は囁きに戻っていく
少しまとまった夏休みを取ったのに
初日の朝、窓を開けると
もう秋の気配がしていた
コメント
一つ一つの表現が洗練されていて心地よいです。
気がついたら凄いなーって呟いていました。
情感が表面張力を保ち続けているようで、ずっと響いています。
@たかぼ
たかぼさん、コメントありがとうございます。たかぼさんのような綺麗な文章が書けるようになりたいと思っています。
@たちばなまこと
たちばなまことさん、コメントありがとうございます。表面張力か…イメージ、よくわかります。まだまだ雑なのですが、高みを目指していきたいですね。
静かな口調で若い時の自分らしさが見つからなかったギャップ、
疎外感、喪失感を語り、年月とともに受け入れながらも成長して
大人になっていった主人公にわかる秋の気配がとても合っている。
@足立らどみ
足立らどみさん、コメントありがとうございます。秋の気配が似合う大人になれたかな、秋だけでなはく、春、夏、冬の似合うおとなになれたのかな。
疎外感、喪失感、受け入れられるように、受け止められるように振る舞ってきたけれど、そうすればそうするほど、そのようなものにとらわれてきてしまったのではないのかな。
足立らどみさんのコメントを読んで、そのような思いがほんのりと。
こんばんは。
なんだか、凄みすら感じさせられました。
もう、言葉になりませんでした。
ごめんなさい、こんなコメントで。
@wc.
wc.さん、コメントありがとうございます。
いろいろとまだ書ききれてないかな、などとも思っています。