風のいろ

 花の時期を過ぎれば気にも止めないでいた
 児童公園の隅にある
 赤茶けて錆びた鉄の 大きな藤棚

 敷かれた石畳に
 風雨で変色したコンクリートのベンチ三脚
 滴り落ちる ちいさな葉はとめどなく
 ひるがえり軽やかに追いかけ合って
 砂地へと移ってくる

 足もと流れ来る なに色とも解らない藤の葉の漣
 二羽の鳩が地面に眼を優しく這わせて
 息づいている

 佇むわたしの耳に 乾いた音
 濃い焦げ茶色した大きな葉っぱの葉先そり返り 
 丸くなって跳ねる様
 緩やかに揺れるブランコの傍まで行くと休んだ

  厚みある雲の切れ間からのぞく 
  あおぞら
  白っぽく拡ごる陽にむけて
  のべた小指に透ける血の色を見る 私は自由、
  若い日のような

 再び歩を進めるスニーカーの靴音
 公園を抜けると 集合住宅の
 ベランダの柵から見える干し物がどれも旗めいている

 

 
 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 何気ない児童公園からの風景が、リリーさんが描写すると、活き活きとした物語が始まるようで、1つ1つにやさしい眼差しを感じました。最後の方で、たんだんと目線が高くなり、空の風景の描写から作者の心模様が感じられたり、葉っぱが軽やかに公園内を移動したり、旗めく干し物などで、詩全体に風を感じられ、上手いなあと思いました。

  2. 「風のいろ」という言葉は、「(草木などの動きで知られる)風の動き」のことだと広辞苑に載っていますね。

    のべた小指に透ける血の色を見る 私は自由、
    という一行からも
    さまざまな風のいろ だけではなく、物事を見ている話者(もしくは、作者)の こころの動きまで見えるように書かれています。すごい。

  3. 軽やかなまなざしが風のようでした。
    何かを揺らすことで風はいろを得るのでしょうね。
    もちろん人の心も揺らして。。。

  4. @ayami
       様へ

     ご感想のコメントを、どうもありがとうございます!(*´∇`*)
     丁寧に読み取っていただきまして、お寄せくださったお言葉、
    素直に嬉しく思います。♡ゞ
     この作品は、近所の公園で見かけた藤の紅葉をながめて「これって…
    何色かなぁ?」本当に、何色とも言えず。言葉のスケッチで色々表現
    してみるうちに、詩が湧いてきました。叙景的表現で描きます作品は、
    元々の筆の不器用さが露骨に出てしまいます。最初、読み手には読み
    づらい原稿になってしまうのです。スッと書ける事が無くて、けっこう
    苦しむんですよ。だから、脱稿出来ても満足しなかったりします。
     この詩は、脱稿してから半年近く経ってもう一度推敲してみてやっと、
    自分で納得出来た原稿なのです。(^^)

  5. @こしごえ
        様へ

     コメントをお寄せくださいまして、どうもありがとうございます!
    嬉しいです。╰(*´︶`*)╯⭐︎
     タイトルは、最後につけました。こしごえ様の広辞苑、その通りで
    あります。「かぜいろ」その動き、を…描きました。
     流れゆく季節の静かさ、語り手の感動と こころの想い、そして
    最終連が暮らし、生命の営み。句を詠むように綴ってみました。
     こしごえ様に感じ取っていただけました事、感謝致します!(o^^o)
     

  6. @nonya
       様へ

     コメントいただけるなんて!感激デス。(#^.^#)⭐︎
     お読みくださいまして、どうもありがとうございます!
     ご感想のお言葉に、(うわぁ、この詩、仕上げる事が出来て
    良かった〜!)自分を褒めてしまいました。嬉しいです。
     はい、「色」ではなく「いろ」と、表現しました。(*´∇`*)

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