掛図
イーゼル。キャンバス。予め準備されたガッシュ。
採光のために設けられたこの部屋の窓には、今はどんよりと雲が広がっている。
私は監視窓を描き、それを懲罰房に仕立て上げる。
褐色の肌をした男を座らせ、その視線がじっとこちらを見つめる。
一頻り口笛を吹いた後に、やはり流れて行く川を見ていた。
ここは三階で、屋上からなら見渡せる灰色の山脈(やまなみ)さえ、
上手く望むことが出来ない。そうでなくても、疎ましい朝だ。
TVの中、ライオンから逃げ惑うガゼル。
便所に立ち、ふらふらする耳鳴りを聴く。
便所の壁に掲げられた、フランシス・ベーコンのポスター。
網の目のように張り巡らされた、行き届いた管理システム。
ラプソディー。非和解。残り物の味噌汁。
俺は今更、何を称えようか? 古書に挿まれた新聞のコラム。
シニの撮ったフィルムで光暈(ハレーション)が起こり、君は〈惑星〉に関する漢籍を繙く。
これからも永遠に交差することのない、工作者たちの生活。
突然降って来る、慈雨のような天啓。光差し、首が濡れ、上衣まで水が染み透る。
古い心気症(ヒポコンデリー)を、涸れた井戸の底、奈落から見上げていた。
コメント
こんにちは。
はじめまして。
好きでした。
それだけを。
読み始めてからどんどんと追い詰められ
逆三角形のように
果てしない閉塞感
極めて0に近い鋭角の先端が
かろうじて奈落の底についている。
すみません、よくわからないコメントになりました。
失礼します。
@wc.
コメント、ありがとうございます。いろいろな感想を聞かせてもらえると、それだけでたいへん励みになります。読んでくださった方の心に作品が届いたと思えると、とても嬉しいです。今後ともがんばります。