供養 2

だんな、だんな、夕べ奴が出たんでさぁ

緑色の
先日もこんな話しましたかね

とにかくだんな
最期まで聞いてってくださいよ

また台所に張り付いてやがったんで
新聞紙丸めてぶっ殺してやったら

屁をひりやがって
ひでえのなんの
ただの屁じゃありませんよ


そいつがまた生意気にも化けてでやがったんでさぁ

なんだかこう青白くぼうとひかってるとおもったら
魂魄この世にとどまりて恨みをはらさでおくものか

はぁまたかいおまえさん
おんなじ話をするんだろうと
腹括って
耳に手をあてて聞こえないふりをしてたんですが

一寸の虫にも五分の魂というじゃねぇかともう屁も涙もかまわず裾に取り憑いてきやがる

もうほんとうにばかばかしくなってきやしてね
やっぱり奴は餓鬼供養をして欲しいっていうんでさぁ
坊主呼びましてね、坊主も呆れた顔してましたが、仕方がねえ、施餓鬼供養。

奴はありがとうございます、ありがとうございますと何度もあたまを下げて往生して行きましたよ
だんな

こんなボロでお恥ずかしい
供養もおぜぜがなきゃできません
家が墓の上にたってるとくりゃ
なかなか人も寄り付きませんで
先におわたしいたしますね
その折りはどうかよろしくお取りはからいください

だんな

生きるっていうのも楽じゃありませんねぇ

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