こいつは愛の話

こいつは愛の話
いつか誰かが
その為に死に
悲しみを知り
いつか誰かが
飢えないように
願い、祈り
作り続けた
ありふれている
真実の話

太陽が輝き
月が白々と光る
星を見る時
私は一人になる
命という器に入った
一滴の涙
荒れ野の
枯れかけた花に
渇いた喉に
干上がった井戸に
齎される
雨と同じもの

私は
(あるいは)
奴隷を知っている
飢えることなく
信じて
疑わない
愛の恍惚のために
生かされ続けた
寂しさの
心を知っている

澄み切った瞳に浮かんだ
奴隷の
本当の自由は
正しい主人を決めるために
間違った主人を殺す
その真白な指も
いつか
誰かの頬を伝う涙で濡れる
罪は問わない

こいつは愛の話
いつか君を殺す
君の心をまもり
あだなすものから
遠ざけるため
編み上げられた
君を生かすための
もうない神の国の
もう咲かない花の
作られた冠

投稿者

神奈川県

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