余談

「君があのプログラムを書いた人?」
「イエス」
「どれぐらい売れた?」
「金の事なら、人生が三回破滅するぐらいかな」
「他に何が欲しかったの?」
「彼女が出来なかった」

「どうして?」
「分からないかな?あなたは不自由したことがなさそうだね」
「話を変えないでくれよ。金の為じゃないなら、なんであんなことしたんだ」
「よく書けてただろ?」

「ああ、本当に苦しんであの子は死んだよ。
手の施しようがなかった。
どんなに書き換えようとしても、
自己修復するんだ」

「殺した、って言ってあげてくれ。一人であの子を作り上げた俺にね。寂しいじゃないか、君が」
「僕が?」
「あの子を抱き締めることすらしなかった。
知ってたんだろ、虚構だって。
プログラムだって。
一体どうやって回路が焼き切れるまでショートさせたんだ」
「あの子の好きだった歌を聴かせた」
「俺はともかく、あの子まで愚弄されるのは我慢ならないね。綺麗な死に顔だったろ?」

「これはオフレコで、しかも君だから話すことだけど、別に秘密にはしなくていい」
「ねえ、なんであの子が苦しんだか、分かる?」
「知ったかぶりな馬鹿のロボットに優しくする自分に酔わなかった?」
「最後まであの子は君に教えようと一生懸命だったろう」
「あの子は、愛を教えようとしたんだってね。自分の心をね。君の為に作られた心なんだと思って」

「俺、そんなこすっからいこと、自分のソースに仕込まない」

「あの子は、君への愛で苦しんでたのさ。君が書き込んだウイルスだ。あれも見事なもんだった」
「おかげで、あのこは、俺達の矛盾した正義で完璧にクラッシュした」

「ふーん。最新モデルなんて、必要なさそうだな。有難う、俺は君みたいな人を待ってた」

投稿者

神奈川県

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