かつて信じられた場所があった。それは夏の風に揺れる葦原だった。
省察はやがて死んで、新しい思索を待つ今がある。光あれ。――光あれ、と誰かが言った。
大理石の廊下を踏んで、暗い使者たちがやって来る。汗馬が颯爽と沙漠を駆け抜ける。
ケセラセラの日々の甘やかなだるさ。子鹿たちに向けた最後のエレジー。
本当のことは告げないさ。明るいわがナルシシズム。
夕暮れのチャイムが鳴っても、永遠に帰って来ない下の子。
蒼穹の高みを飛ぶ一羽のコンドル。それは悠然と軌道を描きながら、大きな弧を描く。
柔らかな宮殿。誰も座り手のいない玉座。
ゲームの世界。散乱したゲノムが、路上でキラキラと輝く。
白光が白さを増して、そのうち一気に暗転する。
それは毒を孕んだひかりだった。死にたくなった。死にたかった。
僕は配慮を遠ざけ、まだ暫くは長い旅を続ける。
付記に記す一行。再びは飛べ。飛ばざれば、君にもこの抑鬱を与えん!

投稿者

京都府

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