夜来る
背の高い男が岩の上に立っている
月明かりに照らされて
ただの棒っきれのように
男は口がきけなかった
なぜなら他に誰もいないから
この星に彼一人きり
花も咲かないこの星に
空気は濃厚だった
有り余るほど
全て男のものだった
ただ繰り返す呼吸
男は腕を水平に伸ばし
つま先立ちで目を閉じると
月明かりに影を作り
明日を迎えた
やがて
燃える玉がやってくる
それを見つめてはいけない
本能的に
男はわかっている
それは激しく燃え
また焼き尽くしてしまうんだ
いったい何を無くした?
いったい何を
男はそろそろと岩から降りると
暗いほうへと歩いてく
夜が明ける前に
裏っかわの岩山へ
夜から夜へ
コメント
王さんの詩、好きなんですよ。
すなわち、この詩人の人柄に惚れ込んでおります。
身に余る光栄です。ほんとに。
ほんとうはこの写真、GIFで作ってあって動いてるのだけど、ここではどうやら最初の一枚を変換してしまうようで残念無念。
人間、もとい、生あるものの本質の部分を抉っている。そんなふうに読みました。生きることは、闘いなのだ、と。
リオのキリスト像が真っ先に浮かびました。
パーソナルなようで大きな視点で惚れます。
この写真は箱根の外輪山の一つの頂上の岩で随分前に撮りました。岩から降りる時足をくじき下山が大変だったのを覚えています。
生きることは闘い、しかし勝手に余計なことして負けるタイプかもしれないな。
心情的なことはパーソナルかもしれないけれど、普遍的なものごとをせめて外に出すなら描きたいなと最近は思っています。