四行の駅
テーブルの上に眼鏡がある
隣に空き地がある
あの頃は雲がすべてだった
そして二人の黒板は溶けて消えた
+
シャワーは壊れた
兄は一人で展開図を描いている
四季はおしゃべりをやめずに
新しいネジが生まれる
+
制度が風に吹かれている
シマウマはどうしてだろう
秘密を守りながら
草原を走る、線香花火を咥えて
+
鮭の影、一面の真昼
空の果てで名前を呼びあう
計量カップの中に入って
お互い背が伸びたねと笑う
+
来年のことを言えば鬼が笑う
僕だって笑う
季節外れの桜が咲いた
失って、いつかまた届く
+
廃屋、その先端
雨上がりの蒸した匂い
洗濯物を畳む音と仕草
掌だけで生きていけない
+
校門の手触りが好きで
呼吸の仕方を忘れてしまった
四行で書かれた無人駅に
幼く雪が降り積もっている
※ wc. さんとの即興四行詩会に提出した
6篇に投稿用に書き下ろした1篇を加えた。
コメント
手触りは不思議ですね、生きている感覚は、手触りかも知れない。
@坂本達雄
坂本さん、コメントありがとうございます。
生きている感覚は手触り…
なるほど、という感じです。確かに五感の中で触感は違う感じがしますね。よい気づきになりました。