とあるわたし

 
 
わたしの部屋にいた蝶々が
飛べない蝶々が
ある日、自分でドアを開けて出て行った

かわりにあなたが入ってきて
二人で話をした
楽しい話をたくさんした

けれどそれはきっと夢で
目が覚めると蝶々はまだ部屋にいて
あなたの姿はどこにもなかった

何を話したのか覚えていないし
あなたが誰なのかもわからない
窓を開けると羽が回復したのか
蝶々は飛んでいってしまった

外は雨が降り始めていて
部屋も、とあるわたしも、ゆっくりと
水に沈んでいく
すべてが溶けて消えた後には
蝶々やあなたが遊びに来られるような
綺麗なお花畑になれば良いと思った
 
 
 
 
※11月19日、……とある蛙さんを偲ぶオープンマイクに寄せて
参加できなかったため服部剛さんに読んでいただきました。ありがとうございました。

投稿者

コメント

  1. 服部さんの朗読を拝聴しました。
    私も「とあるわたしに」なって蛙さんと話しているような
    とても柔らかなイメージに包まれました。
    不覚にもちょっと涙ぐんでしまったのは、内緒です。

  2. @nonya
    nonyaさん、コメントありがとうございます。服部さんに託すことができて良かったです。たくさんわがままを聞いていただいてしまった。
    ……とある蛙さんにご挨拶したかった。nonyaさんにもお会いしたかった。

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