創世記(涙)
大人になること。それは涙を失うことだ。
私たちは涙と共に生まれるというのに、「泣いちゃいけません」の号令のもと、涙はどんどん枯らされていく。
涙。それは私たちの日常を打ち砕く。こんなにもすぐ消えてしまうのに、一滴の涙は私たちの仲をあまりにも凄惨に断絶する。
けれど……だから……涙は、最後の抵抗なのだ。全ての力が奪われたとしても、生きている限り、涙は流れうる。最期の瞬間に撃ち放たれる涙の粒。1秒後には消えてなくなるこの弾に宿る法外の重力……。涙の引力の中で、全てが破壊される。けれど(再び)そこから(のみ)生が生まれる。
「はじめに混沌があった」?違う。はじめにあるのは涙だ。涙は全てに始まりをもたらすのだ。
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