凍てつく人

どうか、わたしに触れないでほしい
あなたの指先が砕け落ちてしまうから
どうか、両の耳を削いでほしい
わたしの言葉はあなたの血潮を凝らせてしまうから
どうか、瞳を開けないで
すっかり冷えきったわたしの心、透けてみえてしまうから
嘆くことさえゆるされない、わたしの息は冬を呼ぶ
泣くことさえゆるされない、わたしの涙は雪を呼ぶ
閉ざされた雪原の、小高い丘の杉の下
あなたはそれでも柄にぎる
幾度も幾度も斧ふるう
幾度も幾度も、わたしをみつめ
幾度も幾度も、わたしにふれて
幾度も幾度も、わたしのなかへ
ふるい続けて幾千年(いくちとせ)
愛しい人よ、凍てつく人
どうか、わたしの頬にふれ
どうか、わたしに接吻を
凍てつくわたしを愛してほしい
 

 

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