善人
兄は善人でした。他人に迷惑をかけて生きることが出来ない人間でした。
兄の一番の悲運は、精神病院に入れられたことです。
自分でものを生み出す力の無い失業者にとって、刑務所は天国のようなところです。
規則正しい生活と、定期的なご飯。そして適度な労働。これは一般社会人と同じ待遇とさえ言える。
しかし兄はその道を選べなかった。それは兄が善人だからです。
私のことを幼少期から自らの腹いせによって、イジメ抜き、なによりも外で解消されない性的フェチズムをぶつけ続けました。
外でそれが出来たでしょうか? おそらく限界があったでしょう。
不良気取りのDJが、私に兄を許せと知ったかぶりの書き込みを始めました。
彼は警察に入れられるぐらいが良い程度の内容の人です。
もし私がクリエイターとして選ばれた暁には、ロックンロールの過激や悲惨など比するに値しない、精神病院での入院体験を題材にしたロックソングを作るでしょう。
兄のデッドな幸運を生きる屍として、拝みたいです。
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