gastronome 41-50
41
微分したキャンディーは溶けて
積分した気持ちは夕焼けに
またひとりの友が溶けてなくなった夜に
42
泣き屋はパンを返してくれた
そのパンは固くなってしまって
食べるには自分の涙が必要だった
43
赤いほっぺたの頃へと続く夜が
いつまでも車窓を流れるさよならおやすみと
りんごの落ちてくようながたんごとん
44
お祝いに山羊をつぶした
生まれたときはとても可愛いしろだった
誰ともなく唄い始めた
45
少女しばし酒を醸めともに酒を醸め
誰の杯も花の降るうち干からびぬよう
そのわき立つ泡にひとひらふたひらのさくら
46
じんじん壺屋の水は甘かったか
久茂地の水も甘かったのか
今は酒屋の水もなんだかとても
47
その浜で揺れる花の種を耕した畑に撒くと
太くてきれいな大根ができる
君もやがて標準語で恋を語るようになる
48
玉城さんから微炭酸のような人だと言われた
生きてる証拠に少しだけビリビリとしてみた
あぁ 美味しいと 最後に言って欲しかった
49
とっくに冷めてしまったカップを
電子レンジに入れてその合間に
ああ なんだか生きているんだよ
50
明日がずっとあるような気がしてた
いつもおなかが空くように
ときどき
詩なんか綴るように
コメント
ひとつひとつが大切なの贈り物のようです。いろいろな人との別れがあって。後輩とか、産まれてくることが出来なかった子とか。
私のかみさんの実家のルーツは鹿児島の徳之島にあってお祝いの時は豚をつぶしたと聞きます。
生きている限り明日はあって。そこに辿り着くことができるのかはわからないけれども。
@たけだたもつ
ありがとうございます。
最後の「詩なんか綴るように」、は今はちょっとなんだかな、と思いつつ、
生き物を食べることについては、羽田恭さんの詩が沁みてきます。
@AB(なかほど)
羽田さんの牛の詩は沁みますよね。私はイメージの中の「綺麗な」牛しか知りませんが。