あの街

雨は上がったようだ
外出してみる
当てはない。

不忍通り
水上音楽堂前の広場で
古書の露店が
いくつか並んでいた
東京百話という随筆集を買う。

立冬を控えた冷たい風が
不忍池から届いた。

日曜。
久し振りにのんびりする
不安もある
どこに足を向けようか。

中庸という言葉が
少し前から
脳裡に棲みついている

かたよることなく
変わらないこと
過不足がない
調和がとれていること。

書くことを
ある種の手段にしたくないし
野心もない
衒いは苦手だ
行動力もあやふや

ネット含羞
そんな言葉が浮かんだ。

中庸とはだいぶ違う。

そうだ
あの街に行ってみよう
親しい詩友が語っていた
裏通り
虚構と、現実、躊躇い、…綺譚、
どこにあるのか
わからない
あの街。

今日なら
辿り着けるかもしれない

たぶん。

投稿者

東京都

コメント

  1. この詩自体が虚構と現実の間を行き来するような趣で、さらに「あの街」と来ると、それはもう行きたくて仕方がないですー。

  2. @あぶくも
    あぶくもさん、日々、惑いながら生きています。その惑いの先に「街」があるのかな、などとも思います。上手く辿り着けるといいのですが…。(不安)

  3. 中庸ときいて、ぼくは波を思い浮かべました。四連目に惹かれます。

  4. 久しぶりにのんびりする
    不安もある
    真理を勝手ながら感じます

    良い雰囲気です

  5. @ぺけねこ
    ぺけねこさん、波ですか。興味深い連想ですね。…さざなみ、潮の満ち引き、連想が広がります。四連目は、ちいさな本音かもしれません。

  6. @那津na2
    那津さん、ありがとうございます。日曜日は、ちょっと複雑な想いが重なりますね。柔らかさと、不安感が絡まった、不思議な心持ち。街中を歩きながら、想いを巡らします。

  7. もし、長谷川さんが目の前を歩いていたら
    声をかけずにその場でそっと見守っていたい。。。
    そんなふうに思わせられた詩でした。
    長谷川さんそのものが詩だから、その後ろ姿を読んでいたい。

  8. @nonya
    nonyaさん、ありがとうございます。そうおっしゃらず、声をかけてください。nonyaさんも都内をよく歩かれていますね。どこかでばったりお会いするかもしれません。邂逅を楽しみにしております。

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