壊れた風船
パン太さんと、パン太くんが恋をしました。
パン太さんも、パン太くんも、コーヒーが大好きでした。
パン太さんと、パン太くんは、手を繋ぐのに、10年かかりました。
その間、沢山のメールをしました。
「ありがとう」
「また、逢おうね」
沢山のメール仲間が出来て、別れたり繋がったりを繰り返しました。
夢はあっても、追う覚悟もなく、二人はお互いに結ばれるために、一所懸命働きました。
多くの人は言います。
「本を読んだり、ものを考えることに、なんの意味があるのだ」
と。与えられたゲームと、決められた会話。
自分の頭でものを考え、発する力はなく、ふにゃふにゃの会話と、ふにゃふにゃの知性。そして、それを美化する沢山の言葉が、空気の中を舞い続けました。
「なんのために生きているのかわからないけれど、仲良しの輪」
パン太さんと、パン太くんの、お腹の中はコーヒーとミルクで温まり、イースト菌の発酵で、夢いっぱいに膨らんで、いつかは破裂し、青空の向こう。あの雲の向こうに、プラスチック状の夢で塗り固められた、ふうせんのように飛んでいくでしょう。
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