夢を見ていた

夢を見ていた
北川 聖

僕は半分醒めていたがずっと夢を見ていたのかもしれない
中学時代のあの人にあの場所へ行けば会えると思っていた
時間がどこかへ消え去っていた
夢の中で時空を彷徨っていたのかもしれない
朝からずっとそう思っていた、早く会いに行こうと
さあ行こうと表に出たら彼女がいるわけがないと気づいた
あれから50年経っていたんだ

それなのにもう午後2時なのに長い長い夢を見ていた
僕はもう起きていると思った。だから顔を洗い歯を磨き
でも心の中であの人に会えると疑いもしなかった
頭と心が遊離していた
僕は頭の中で自然に毎日の仕事を始めていた
それなのに心の中では中学生のままだった
彼女に会いに行かなくちゃと気持ちがはやっていた
僕は起きながら50年前の夢を見ていたんだ

突如として時間が現れた
僕は不思議な感覚に襲われた
どちらの僕が本当なのだろうと
夢が現実に浸潤してきたのが正しいのだろう
でも彼女の面影が心から離れない
彼女はあの場所にいると感じてしまう
僕は自転車に乗りクラスへ行った
鏡を途中で見た 見知らぬ老人が映っていた

3年4組にいるはずだ、早く行かなければならない
僕は思い切りドアを開けた、休み時間だった
彼女がそのままの姿でいた、他のみんなも
何も変わっていない、いつも通りだった
僕は思った、なんだ夢を見ていたのかと
彼女は言った「遅かったわね、どうしたの」
「寝過ごしちゃったんだよ、そしたら変な夢を見てね」
僕は学生服を着ていた、彼女がいつもの微笑みを見せる
そうだ僕は若かったんだ、まだ人生は一杯ある
当たり前だ まだ15歳なんだよ

でもふと思わないではいられなかった
ここが夢の世界ではなかろうかと
僕は彼女の隣に座り手を握った
彼女は少し驚いたようだったけど
手は離さなかった、ほらこんなにも全ては鮮明だ
僕は夢を見ていたんだ

投稿者

埼玉県

コメント

  1. 夢、儚いな。現実みたいに儚い。

  2. ありがとうございます。歳をとると現実も夢も大差なくなり、夢のような詩が書けます。死に近づいているのです。

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