白の記憶

白の記憶

すこし濁った水だった
空が低いせいで
季節はあちこちへ忙しいけれど
夜になる頃には
知らないふりの街並みが変に優しくて
ぼくが世界を慈しむ
神さまのつもりで
心ないことばを吐くと
君たちが笑う
ほんとうは悲しいから
優しい花になりたいんだ

戻らない時間に別れを言えないのは
戻ると信じているからではない
夜がいつだって優しいからだ
裂けそうな胸に本物の裂け目ができて
白い花が生まれる
糸を撚り合わせた作り物の
白い花
ぜんぶ嘘
あふれてくる

痛いなあ
くるおしいなあ
でも白い夜はいつだって優しいから
小さなささやきを拾って
集める

家に帰るころには
みんな消えてしまうけれど
すこし濁った水には
白い花びらがたしかに浮かんだ

投稿者

東京都

コメント

  1. 白い記憶というと僕は記憶が飛んでしまったころを思い出す。記憶が飛んでるんだから実のところ思いだせないんだけど。
    記憶をなくしたということは逆に喪失感を薄れさすのかもしれない。
    戻らない時間に別れを告げられないのは、こわいからだ。そらしておきたいからだ。
    この詩ではうちに帰りついて白いものなどまた忘れればいい。ただまた思いだすから詩が生まれるんだなぁ。

  2. 王さん
    いつもコメントありがとうございます。嬉しいです。
    そらしておけば、思い出は思い出のままなんですよね。そのかわり前には進めないけど、前に進まなきゃってずっと思ってるのもなんかしんどいし。前になんて進めないと諦めてみる方が人間らしいのかもしれないです。

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