雨はいつも
気づかないうち
身体の底で脈を打っている。

目をつむる。
脈を数えている間
私は
私に戻らなくてもよい。
誰かの静かな代わりになっていれば
それでよい。

脈は掌編に似ている
脈を打ち続けることは
いくつもの物語を
無造作に打ち消していくことか
そのうち物語は
誰かの身体と馴染み合い
現実になり
たしかな重みが積み重なっていくのだ。

雨が激しくなってきた。

灰色に染まった空
間もなく
宵が始まるだろう。

雨と、あなたの脈が
気がつくと被さっている。
かつての掌編のように。
私はもう
私に戻らなくてもよい。

投稿者

東京都

コメント

  1. 目の前に見えているものと、瞼の裏に見えているもの。文体も相まってかそれらの内省的なバランスがとても心地良い感じがします。

  2. @あぶくも
    あぶくもさん、現実と、虚構を、掌編と脈に被せて書いてみました。内省と捉えてくださったこと、嬉しいです。内省を描きたかったのです。

  3. 雨音は様々な物事を思い起こさせますね。
    目を閉じると確かに自分の内側から響いてくるようです。
    脈となった雨音で紡がれた掌編。とても美しいです。

  4. @nonya
    nonyaさん、掌編、一場面でしょうか、断片。そういうものに惹かれ詩を書き続けてきました。脈とともに、物語が細くなっていく。…掌編ですね。

  5. 気づかないウチに、身体のウチ側と心の内側に色々なものが作用して
    わからないのだけど、多分シンプルで
    ウチなるそれらをコントロールできればもっと楽なのかなと
    考えました
    素敵です

  6. 雨が激しくなってきた。

    このフレーズからの転調と間合いがいいですね。

    雨と脈。打ち続けるもの。
    静謐に内面と向き合う時間が伝わってきました。

  7. @那津na2
    那津さん、コントロールできればと、思うのですが、難しい。でも、それが結果的に掌編に繋がっていくのかな。掌編をもっと断片的に縮めたものが、詩だと、勝手に解釈しております。…上手く言えないのですが。

  8. @渡 ひろこ
    渡さん、現実と、虚構の狭間を、ふと考えることがあります。内面、内省と関わってくるかもしれませんね。掌編は、…心象風景なのかな。

  9. 耳をすます。目を閉じて、手を添えて。読んでいると、そういう静けさのようなものをもらえた心地です。一呼吸、深く深く、一息させてもらえました。

  10. @ぺけねこ
    ぺけねこさん、ありがとうございます。静けさを感じていただいたこと、嬉しく思いました。詩を書く時、静けさを含め、さまざまな、意思、情景、心持ちが、浮かびます。その集積が、詩なのかもしれませんね。

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