走り書き

鞄の中には
ひと握りの青空と
昨日捕まえた飛行機
微かなその羽音
生きていく毎日の走り書きは
遺言のように積み上がって
夏、という言葉だけが
いつまでも
うまく書けなかった
原っぱの真ん中で
電話が鳴っている
誰も出ることなく
鳴り続けている
多分、もう
誰もいない

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コメント

  1. 読者に勝手な空想をさせてくれる自由度の高い詩をいつも書かれるたもつさん。夏だけが上手く書けないというワードから私の空想は1945年8月に飛びました。自ずから鞄の中の飛行機がB29に変わりました。鳴り続ける電話は警報のようにも聞こえ、誰もいない野原は焼け野原となりました。

  2. @たかぼ
    たかぼさん、コメントありがとうございます。
    あの夏を体験していない世代ですが、いろいろな媒体を通して、忘れられない記憶として心に刻み込まれています。
    たかぼさんのコメントを読んで私がイメージしたのは、零戦でした。
    焼け野原。誰も何も残っていない焼け野原。何故か匂いはありません。焼けずに残った電話だけが鳴り続けている。誰が誰に何を伝えたかったのだろう。
    ありがとうございました。

  3. 原っぱの真ん中で
    電話が鳴っている
    誰も出ることなく
    鳴り続けている
    多分、もう
    誰もいない

    この心象風景がシュールで、とても印象的でした。
    余韻が残る作品で味わい深いです。

  4. @渡 ひろこ
    渡ひろこさん、コメントありがとうございます。誰も出ない電話が好きで、結構モチーフにしています。伝えたい思い、伝えられない思い、そんな人の思いを知っているか、いないか、ただ鳴り続けるだけの電話。そんな構図が好きなのだと思います。

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