記憶

記憶

笑みなく終えた会話の跡には
角ばった鉱石の破片が
うすぐろい空へ帰っていく
雲のすきまを通る頃には
小さな針状の霧となって
ぼくのからだにつきささる

滲が目立つ爪はそうやってできた
爪から伸びる青白い指には
くつきり浮かぶ青白い静脈が
それはぼくが存在する証なのだが
血管内のヘモグロビンと
対話することはできない

部分と全体とはそういうことだ 

鳥は嘴を知っているが、嘴は鳥を知らない
眼は風景を知っているが、風景は眼を知らない
母親は子宮を知っているが、子宮は母親を知らない
だが世界は生に向かっていく

死に向かうことは対話の始まり
実在と架空の境界
感覚と空想の裂け目

それは遠い日の記憶 

投稿者

広島県

コメント

  1. 鳥は嘴を知っているが、嘴は鳥を知らない
    眼は風景を知っているが、風景は眼を知らない
    母親は子宮を知っているが、子宮は母親を知らない
    だが世界は生に向かっていく

    良いですね♪ 

  2. おおくの、美しい言葉があります、そしてそれらの美しい言葉は、それぞれの方角へと、舞い上がり、星のエキスとなるでしょう。さらに美しい鉱石となるために。

  3. 感想に語彙がまったく足りてませんが、めちゃくちゃ良かったです。まずは、それを伝えたくて。

  4. @レタスさん、有り難う御座います。良かったです。詩作は気付きがいつもあります。

  5. @坂本達雄さん、有り難うございます。言葉が組み合わさって、美しさが出てくれました。嬉しいことです。

  6. @あぶくもさん、有り難うございます。詩のイメージに共感頂けて嬉しいです。

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