招魂山

右手の下の方の墓地から吹き上げる風に
すさズず すさズず
きゃらぽきゃらぽと呼応する
仄暗い竹林抜けたらそこから先は雑木林
扇で手を振っているのは棕櫚
一部だけ残された石垣
人気はない

坂を少し登ったところに大きなクスノキ
もたれてみたり抱きついてみたり
帰ってくるとだいたいいつも来る
これまでのことをひととおり伝えては
あれやこれやを吸い取ってもらう
代わりに生気と正気を吸い込んでおく

クスノキからほど近くに見える
ほぼ誰も使わなくなったであろう小さな公園
いるはずのない子どもの姿を想像してたら
男の子がひとりでチョココロネの骨みたいな輪の中に寝転がって いた

やわらかく突き上げてくる蹠の記憶
時空が瞬間で収縮する

たまらなくなって先ほど森の中で見つけてポケットに入れていた
根の生え出したクヌギとコナラのどんぐりをひとつずつ分けてあげた
それええやつやから家で育ててみて
おっきくなったらここに植えにおいで
ありがとう
大事にしいや
うん

おいちゃん なにしに来たん
うん?
僕くらいちっさいころからここで遊んでたからもうおいちゃんになったけどまた散歩に来たんよ
そうなんや おいちゃんおもろいな
あのおっきい木見えるやろ
あの木ぃな おいちゃん生まれるもっと前からあるねんで
あの木ぃみんなを守ってくれてると思うから
僕おっきいなるまでずっと大事にしてよ
うん
ほやけど僕さっきからひとりやんかどっから来たんよ

投稿者

千葉県

コメント

  1. チョココロネの骨というのがツボでした。「楢山節考」を思い出しました、があれも民話でもなく創作だったと思います、この話も昔話や民話と思われるような雰囲気があります。

  2. てぃもさん、ありがとうございます。
    コロネの骨、ツボってもらえて嬉しいです(^^)
    楢山節考は姥捨なので、どちらかというと先に投稿した『手』という詩のモチーフに近いかも知れませんね。

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