カアデガン

彩色のない顔をした身ごもった女が
極彩色のカアデガンを羽織った男の
遺体に寄りそっている

女は涙の数よりも口の数のほうが多い
目や鼻や耳も口になってしまっている
女は妊婦に見えたが腹は空だと話す
男を長年の連れ添いで内縁だと話す
死の手法について尋ねたが知らないと答える
故郷に帰るのかと尋ねたが知らないと答える

そのカアデガンはどこで買ったのだ
最後に私が尋ねると 女はすぐさま
高島屋だと答えた

投稿者

茨城県

コメント

  1. 何とも言えない質感のある詩。心のひだの気持ち悪いところを撫でていって、それが心地良さになる。最後もいいな。

  2. @たけだたもつ

    感想ありがとうございます。
    夢を見ている感覚で書いたので、妙な感じになりました。

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