ふと見ると少年
薄闇が僕を抱きしめて
霧雨は優しく髪を濡らす
家に帰らなくちゃ
早く帰らなくちゃ
誰かを待たせているかもしれない
ふと見ると脇道
遥か遠くに山々に雲がかかり
蓬莱山もものならず
こっちは家じゃないのに
こっちは違う方向なのに
何故か足が止まらない
夜は近いがまだ朝は来ぬ
私の求めるものは知らぬ
早く帰らなくちゃ
いや帰りたくない
明日の予定が狂うかもしれない
ふと見ると南極
ペンギンが空を飛び
シロクマは優しく吠える
ここは家じゃないのに
いや、新しい家だ
足はまだ止まらない
ふと見ると紫陽花
ふと見るとクジラ
ふと見ると時計
ふと見るとポンペイ
ふと見ると昨日は遠くに消えた
コメント
ふと見ると~が面白い味を出してます。ふとというには壮大すぎるものを見ていて。
寄り道こそが人生での目的かもしれません。
寄り道をするということはまだ道半ばであり、宝探しであり、混乱の真っ最中であり、欲求だからつまり必然。
こっちじゃない、これじゃないという感覚はある意味誘惑ですよね。
瞬きする(ふと見る)ごとに視界(時空)が切り替わる感じが良いですね。
追い立てられる加速がちょうど時空間をいくテレビのザッピングするみたいになっていて幻想的でしたが、最後のポンペイというのが、また巧妙で素敵でした。
ごめんなさい、巧妙→軽妙 と書こうとしました。