宮沢賢治のオマージュ

そんそんと そそり立つ巨木たちが
おんおんと 響きあう静寂の中で
ぼくは何を探しているのだろう
ひと際太い老樹に聞いてみた

わしらは千年以上の時を過ごしてきた
人間の来る処ではない
わしらは静かに眠りたいのだ
早く立ち去るがよい

帰る処は忘れてしまいました
ただ 何かを探しに森に入ってしまったのです

黄金や宝石でも有るかと思うのか
そんなものは微塵も無い

いいえ 黄金や宝石などは探していません
何かぼくにだけ大切なものを探しているのです

ほう おまえにとって大切なものか
何か解からぬが 紫の蝶について行くがよい
この森の中に動けるものはそれしかいないのだ
わしは三千年も此処を動いたこともない
蝶について行くがよい

解りました そうします ありがとうございました

老樹はそれ以上何も言わなかった

しばらく樹林を彷徨うと
紫の大きな蝶が音も無く舞っていた

どれくらい歩いていただろう
やがてポカリと開けた草原に百葉箱が立っていた

扉を開くと緑色に光る紙が一枚
手に取ると 無限列車の永久切符だった

しばらくすると遠くから
汽笛が聞こえてきた

投稿者

埼玉県

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