病院
廊下に咲いた花を
摘んで歩いているうちに
迷ってしまった
春の陽が差し始めた病室に
戻りたかっただけなのに
白い売店や
柔らかな窓ガラスに触れて
いくつもの季節に
取り残されていった
日々の暮らしの中で
少し嫌な匂いがすると
看護師の薄いスクラブで
新しい親指が産まれている
お医者さんが命に似たものの
問診をするけれど
何を差し出せばよいのか
本当は誰も知らない
海岸へと続く受付の所で
係の人が海風に揺れながら
息の継ぎ方を案内している
病室は今ごろ何度目かの
春の陽射しが溢れ
ふと沖の方に目を向けると
外の海に向かって泳いで行く
美しい作業療法士の群れ
コメント
ラストのイメージは、新鮮です。・・・すばらしい。
素敵な作品ですね!
因みに私は通算700日入院したことがあります(^^;
@坂本達雄
坂本達雄さん、コメントありがとうございます。自分の中でも、ちょっと今までにない感じで戸惑っています。コメント嬉しかったです。
@レタス
レタスさん、コメントありがとうございます。
700日は大変ですね。その後、具合は如何ですか?
私は丁度同じくらいの日数、ピンチヒッターですが、病院に勤務していたことがあります。
素敵です。
匂いとか静謐さとか規律とか病院って普段の感覚にないところが研ぎ済まされますね。
なじみのない異質なものに守られているような感覚と、春の陽射しが溢れるおだやかな海が隣接しているところで、やがてふところに寝落ちしていく安心感に包まれる。アンバランスな夢物語のようで美しかったです。
@たけだたもつさん
暖かなお言葉感謝いたします。
私は強烈な不眠と拒食で6回入院しました。最近は薬が合ってとても快調です。
某所に何年も現れなかったのもそのせいです。
たけだたもつさんのお導きのおかげで此処にも少し慣れてきました。
これからも宜しくお願い致します。
@ザイチ
ザイチさん、コメントありがとうございます。
確かに、病院は異世界のようですね。
2年間ほど病院に勤務していましたが、中に入ると更に、秩序と混沌の世界でした。
病院勤務経験のある方が書くと、こんな風になるんですね
不思議と新鮮な狭間
病院とは、妊娠出産の時以外はほぼ無縁の人生でした
でもこの詩を読んだら、なんだか病院に住んでみたくなりました
そのまま病室のことは忘れて、美味しいご飯のお店に行きたくなりました。
@イチカワナツコ
イチカワナツコさん、コメントありがとうございます。実際にその世界に入ってみなければわからないことって沢山ありますよね。今は病院勤務を終えて元の会社に戻りましたが、その元の会社だって、社外の方から見れば、まったくの異世界かもしれません。わたしは小中高を通じて運動部に所属したことがないので、本当によくわからない世界です。
@たちばなまこと
たちばなまことさん、コメントありがとうございます。
出産のために娘が入院していた病院は松本楼が入っていたのですが、気づかずにドトールでランチをとったのは痛恨の極みでした。いえ、ドトールのミラノサンドBも好きなんですけどね。