マーちゃんD-28
彼女と僕は知り合って五年
暮らし始めて二年になる
名前は真知子、マーちゃんだ
今日は１２月２８日、そうマーちゃんの誕生日だ
昨日までは忘れたフリをしてたけど
ちゃんとプレゼントを買いにボディショップに寄ったんだ
彼女の肌がいつまでもすべすべの良いコンディションを保つように
そんな願いを込めて贈るプレゼントに僕は胸を高鳴らせた
それよりももっとすごい愛情という名のプレゼントを抱えて
笑みを隠し切れずにマンションの階段を駆け上がった
彼女は年末の忙しい会社勤めを終えて帰ったばかりで
日常の緊張からか少し疲れた様子でさっきからベッドに横たわっている
「頭のネジをゆるめた方がいい。ピンと張り詰めた糸はこんな日には弛緩させておくのさ」
僕は彼女に語りかけ、そうするのを手伝ってあげた
裸になってしまえばいい 裸に
そう何度も唱えながら
彼女がまとっている全ての余分な飾りを取り去ってやると
うっとりとしてしまうような程の曲線をもって
彼女はその肢体を僕の前にあらわにした
これがリビドーというものか
神の芸術作品を前に跪き口づけた
唇の感触はよくわからなかったが
そんなことはどうでもいい
僕はそっとプレゼントのレモンオイルを取り出し
薔薇のような香りのする彼女の首筋から
滲ませながら慰めるようにベールに包んだ
こらえているのか彼女は声をあげたりはしない
腰のまわりの非常にまるみを帯びたあたりから
それぞれが別々の生き物であるかのように五指をからめて這わせ
くびれた部分に熱い息を吹き掛けて優しく愛撫した
と、その時彼女は期せずしてひくついたように悶えた
声は押し殺したままだったが
僕には彼女の甘い息づかいが聞こえるようだった
忘却の彼方に押しやられた時間を振り返るでもなく惜しむでもなく
戯れるふたりにもやがて忘我はおとずれる
「マ、マーちゃん！・・・・・・」
オルガスム曲線を綺麗に折り返した彼女は
日常に自分を戻すべく新しい糸を張り合わせていく
乱れた様子など微塵も漂わせない彼女を眺めて
これでいいんだ、と僕はつぶやく
その言葉の奥に揺れるせつなさを噛みしめながら
煙草ふかしてる、そんな僕に
彼女はそっとＥのコードを奏でてみせた
コメント
確かに楽器にはエロティックなものを感じますね。擬人化されたものかと思いきや、最終行でどちらとも取れるのが良いです。オレはギブソン派なので、マーちゃんとそういうことをする時は遊びになっちゃうなあ。
トノさん、遊びじゃイヤよ。
J45じゃ誕生日にできないしなぁ。
『ぎぶさんハミングバード』で続きお願い‼️（もうタイトルも意味不明だけど）
ちなみに私はK.Yairi派です。
あ、持ってるのは何とMorrisなんすけど(^^)
僕もD-28あこがれました（アコギだけに）。だけど僕もトノモトショウ派で死ぬ気で買ったのはギブソンのJ-45。マーチンは生真面目そうで手を出したら責任をとらされそうです。
そして昔も今も僕も楽器はどれも女性として接していますよ。
王さん、J45持ってんだ‼️すごいね。
楽器は女性ですよね。
好きになったらそれは全て本気ですよ。
責任取ってくださいよ。
アコギは、長く弾いていますが、結局、上手くはならなかった。そこそこ弾けるようにはなりましたが…。だから、私は、女性の琴線には疎いのかもしれません。そんなことを、読後、思いました。私は、コードで例えるなら、Fm7かな。
長谷川さん、アコギ弾かれるのですね。私も上手くなりませんでしたが、好きではいます。ギター以外もそうですが好きなものはお手入れなどメンテも含めて好きで、そうしながらいつまでも愛でていたい。登山も好きだが、帰宅後に登山靴をメンテしてる時間も好きというかメンテ時間が好きだから山に登るんじゃないかみたいな(^^)
コードは、クリシェ途中のAaugなんかが好きですが、詩の最終連に持ってくると、さすがに？？？となるのでやめました。