視力

森の暗がりに春が座っている
その髪はまだ濡れていて
両足を拘束されている
言葉を使いすぎたんだ

木々の枝は黒くて細く
それぞれかすかに揺れている
樹液のように時間が垂れて
怠惰な虫が群がっている

水辺で男が手足を洗う
明日のことさえ分からずに
支えをなくした光の群れが
地平の広さを頼っている

春の視力はすぐ力尽き
地平を真っ赤に染め上げる
水平に広がる現実を区切る
幻想の太い象の足

投稿者

埼玉県

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。