木槿

木槿

都電の車両を追うように
緩い坂を上がった。

交差点を過ぎたところで
車両は再び専用軌道に入る。

ノースリーブ姿の女性と
目が合った
漣のまま坂を下っていった。

この間まで梔子の咲いていた路地に
木槿が咲いていた
吸い込まれそうな青さだ。

花の色を
どこかで見たことがある
また都電とすれ違う。

少し先のほうに
かつてよく訪ねた家があった。

空が、青いまま昏れていく。

投稿者

東京都

コメント

  1. その風景に自分もいるような、視点を分け与えてもらえるような詩ですね。加えて、「かつてよく訪ねた家」がとても良く効いてる気がします。

  2. 都電が主役なのだけど、実際はこの写真の構図のように路上から町を漫然とみる目線がいいです。写真のトーンもいい。

  3. あぶくもさん
    町の散策が好きなんですね。散策詩みたいな感じの詩を好んで書きます。その風景に自分もいるような、というふうに読んでいただけると、嬉しいです! …かつて、の想いも、少し入れてみました。

  4. 王殺しさん
    都電荒川線の、王子のあたりです。荒川線は、そのほとんどが専用軌道ですが、このあたりだけ、車道の中を走ります。思い出の風景でもあります。

  5. 綺麗な写真ですね。なんだか懐かしいスローライフを感じます。
    最近の23区城北地区の人気が凄いのは再開発もさることながら
    ドローン、SNSやスマホはもちろん、PCも無かった古き良き
    昭和の名残りを感じさせてくれるからなのかなとも思いました。

  6. 足立さん
    写真の木立は、飛鳥山です。城北地区、好きなんです。上中里、王子、十条、赤羽…。さり気なく、昔の東京が残っていますよね。都電も通っていますし。

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