野良ペンヶ浜

 「ほうれ、みやげじゃ」
 
 そう遠くない昔
 土佐清水の港あたりには
 遠洋漁業で命を張ったお父やんたちが連れて帰った
 ペンギンが
 やがて野良となったペンギンどもが
 うろうろしていたそうな
 
 ウミウシは紫色の液ゆりゆら
 触手も妖しいイソギンチャクを
 フグがぷっくら腹膨らませて威嚇する
 その浜辺を
 歩いていったかペンギンどもよ
 ふてぶてしくもぶさいくに

 てちてちてちてちてちてち

 フナムシげそがそ這いまわる
 波打ち際にたたずむは
 まごうかたなき野良ペンギン
 ざんぶ、ざんぶ、ざぶ、ざぶ
 岩場から凪に飛び込む同胞たち
 短い首を大きく反らせば
 濃紺の背中にやわらかな陽ざしが光って
 振り下ろすくちばしに突き刺ささった
 うち上げられたばかりの
 ヒトデ
 
 はるか遠く南氷洋では
 氷が激しくぶつかりあっているだろうか

  (西原理恵子『できるかな』〈ふるさと高知編〉を参照、およびそこからの着想)

投稿者

兵庫県

コメント

  1. お久しぶりです。
    シナリオは描き続けてコンクールに応募し続けています。昨年度の城戸賞では、ラスト二十人の二次選考まで初めて残りましたが、ファイナリストになることはできませんでした。残念。
    なんだかそんな気持ちになり、とても久しぶりに過去に書いたものを、手直ししてみました。
    シナリオはこれからも書いて、コンクールに応募し続けようと思っています。

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