君は天使ではない
(僕は真実を語るが――
真実は僕を語らない)
埃っぽい路地だ
歩けば
歩くほど
足音が反響する
歩けば
歩くほど
人気がなくなっていく
歩けば
歩くほど
空間ばかり蔓延る
世界は
無限に近づいていくのに
歩くためには
陶酔してはならないから
身体を意識するほかなくなる
身体を意識するほどに
早く部屋に帰りたいと願うのだが
部屋に棲みついている天使のせいで
牢獄のような気分から
逃れられないんだ
牢獄から抜け出すために
月夜をここまで歩いてきたのだが
歩けば歩くほど
行先ははっきりするのに
天使が居座ろうとする限り
どこにも行けはしないんだ
きっと
人生の根幹とは
何を欲するかなのだ
誤ったものを欲する限り
どこにもたどり着けはしないのだ
路地を抜けると
迫るような夜空に
どこかで滴る水の音だ
天使が部屋に居座るほどに
僕の旅程は長くなる
その長さがあまりに在るせいで
存在しないことの証左である無限と
僕は何の関係も持てないんだ
そうして
世界は無限に近づいていくのに
僕は天使とともにいて
在ることに執心しているんだ
在ることは
愚かさの証なんだ
天使は
僕の愚かさに棲みついているんだ
天使が棲みついていることが
在ることの証だから
この循環の外には
何もないんだ
愚かさが消えれば
天使は消える
天使が消えれば
在ることは消える
在ることが消えれば
愚かさが消える
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