フェニックスからドレスコーラン

フェニックスからドレスコーランまでの防衛戦は
死体と半死体で溢れていた

いや、正確には連なる死体と半死体の山
というほども無く
ただ、ヘッドクウォーターは
頭を悩ませていた

前進し孤立しかけている
第12特別防衛連隊は
故郷の地
ドレスコーランの遥か南の海を思い出す

禍々しい形のドローンが
蠍のような足々を
不気味なか細い音を
キュワーキュワーと
機械と甲殻類の混ざった
湿り気の気配をさせていた

「くそ 近くにとび蠍がいる」

「西側にとび蠍の群れがいた
斥候が近づいてきているな、数匹」

キュゥ

近くに不気味な気配を近づける

ムシのライフルで斥候の蠍を撃て
多分2匹だ
群れは20ほど
徹甲弾を使え
その後東側に静体で移動
あのビルに入る

砂漠化した丘陵地帯に
ビルの影が見える

「一等軍曹、あのビルには如何にもいそうだ」

わかっている
だが、ここにいたら
とび蠍と迫撃砲の的だ
夜明けが近い

故郷の海は瑠璃色で
ボートが
カラフルな魚を釣り上げ
少し、歌が聞こえた

ムシがマークスマンの熱探知で
蠍に照準を合わす
思ったより近い
(呟いて)
引鉄をゆっくりと引く
蠍は割れて
やや遠くで
キュワーっという音がハッキリする
ムシは2匹目を倒すと
中隊は低く
東に向かって行く
丘陵線を右手に
援軍のない左手の川を呪う

途中に半死体が見える
おかしい
ここに奴がいるか?

「起き上がりますかね?」

ムシはサイレンサーを持ってきていない
ナイフでやるしかない

ヘッドクォーターからの通電を表す
バイブレーターが耳元に鳴る

ムシの熱探知照準が遠くの群れを細く
うっすらと
進軍の部隊へ
死と生を説くように
捉えていて
ムシは開戦の日に見た
女を思い出していた

投稿者

東京都

コメント

  1. まさかの共通テーマ『蠍』のやつ、来たーーーーっ、今!?

  2. @あぶくも
    確かに!蠍が自然に出てしまった!
    (笑)

  3. ムシという名詞が良い味を。
    かっこいい詩です!

  4. @たちばなまこと
    ありがとうございます!
    ムシって響き、良いよねー

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