きざはし

 沈丁花に
 親しかった男の顔が
 薄れてゆく

 東山の下に緑の堤
 そして瀬の音 柔らかく
 染めたばかりの白髪にも吹いている
 春の風

 涙は水のほとりの底に流れて
 姿をみせない音に
 心は倦み
 歎きでもなく笑いでもなく

 路に湧き立つ舞踏、いまは眼に沁む
 木屋町のネオン映した私の顔を
 あなたの影が取り巻いて
 五月から背かせた

 若芽にふる 雨
 桐の葉の
 伸びる音であったのか
 あした又、みどりのきざはし深くなり

投稿者

滋賀県

コメント

  1. 沈丁花の季節ですね。私も懐かしい香りとともにいろんな思い出が沸き起こります。みどりのきざはし、どんな風景なのだろうと想像を掻き立てられながら、読ませて頂きました。ふわっと香りを運ぶ、春の風を感じ、時を経て熟成されていく記憶、そしてまた新しい季節の始まりを感じました(^^)

  2. @ayami
       さまへ

     ご感想のコメントをお寄せくださいまして、とても嬉しいです!(*´∇`*)
    どうもありがとうございます。
     この詩は京都を舞台にして、そこはかとない切なさや明るさの相まった
    季節を、抒情的に描いてみました。
     後半の「木屋町」だけで詩情ありすぎて…全体に奥行きを持たせる事が、
    ちょっと難しかったです。^^;

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