泥春
冬がいつ息の根を止めたのかさえ
気づく人もいないのに
手のひらからこぼれおちていく春
誰かに踏みにじられたタンポポが
どうして、と問いかけてくる雨上がりの泥濘
何度目の春か数えるのにも飽きて
夜ふかしが何よりも楽しかった
あの頃にはもう戻れないけど
嘘をついた数だけdeleteキーを押したら
曇り空を塗りつぶす生ぬるい風よりも
わたしは自由になった、かな
黙って見送ってやれよ
どうせもう二度と見ることもない後ろ姿
行方不明の地図みたいに灼きつけたら
いつも間違えてばかりで歩いてきた道でも
どこまでもずっと
一人で往くしかないんだから
コメント
息の根を止めたという表現がとっても好きです。
@たちばなまこと さん
ぼくも好きなので、あまり多用しないようにと思ってるんだけど、ついつい使っちゃう笑