夕陽のインク

うすら寒い雨の中
ローソンの一番くじを買いに
バスに乗る
襟を合わせて震える
マスターソードが欲しい

背後にあの人がいる
気配で分かる
結婚は手段
恋愛は願望
私に道を間違えさせたいのだろう

この町に降る
雨粒の一滴であること
大河になることは
忘れられることだ
逆らわずに流れることなどできない

鏡面のようなガラス窓を
横切っていく
人の群れが表すものは
魚だと思う
どんなに多くても
総じてイワシと呼ばれる

鶴見川を渡りながら
ミセスのMIDNIGHTを聴く
夕刻
それは心の中に溜まる泥
孤独は高く売れる
在り得ないから

300均出身の小さな植木に
水を溢れるまで与える
おまじないのように
育てているのは
あの人への憧れかもしれない

河川敷に零れた
雲と光は
世界が星だと訴えている
唯一だと
私は笑いながらステップを踏み
夜へ向かって帰る

空を飛べたら
あなたの所へ行くのに
海を泳げたら
あなたの所へ行くのに
草原を駆けても
あなたに辿り着けない
ならば思いなど
いっそなかったことに

一滴の雫が
町中に降る

投稿者

神奈川県

コメント

  1. 言葉の濡れ具合なのだろうか、それとも世界を透き通る風なのだろうか、それとも、未完であるシタールのひびき、なまの息は、街灯へとステップする。重さと軽さと、かそけさと、これ以上のインクを、夕陽は流さない。

  2. @坂本達雄

    自分の人生を、誰か一人の為に、
    たった一度降った雨のように送りたかったのに、
    と嘆いている詩です。

    何度でも降られ、雨粒を振り払い、雲行きを読み、
    名前を調べて、建物の中へ逃げ込む人々に、
    何度でも降り、全て厄介な「雨」と呼ばれること。

    愛に違いがないこと、全ての人が人を愛すること、
    自分自身の愛がこの世で唯一のものだと信じながら、
    何度も違う人を愛すること。

    楽園じゃないと叫んで、人を不幸にすると分かっていて、
    夜の闇に映える真っ白い夢を見せること、
    太陽に照らされたどす黒い絶望を描くことなら、
    前者の方が絶対的に好かれるような気がしてなりません。

    私の目には闇が覆いきれない悲しい光が見えるのです。はい。

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