ジギタリス

まあずっと前から気付いているとは思うけど
僕は愛を証明しようとしている

母は利害のために子供を産んだ
父を利用するため、世間体のため、
それが流行りだから、責任だから、

泣く子供が嫌いだから打った
醜い子供だから女の子扱いしなかった
頭が良ければ金を稼ぐと打算した

不必要な買い物とギャンブルで父の金を使い込み
恋愛の歌を大音量で流しては子供を放置する
彼女が子供を殴らずに幸せになる方法を見付けられますようにと

祈らずにはおれないでいるんだ
分かって貰えるとは思うけど

初めて会った時、僕は初めて人を許せたのだと思う
神としてでなく、子供としてでなく、人間になれたのだ
恩返しのためになら、なんだって引き換えに出来た

彼女を初めて見た時に

何度死のうと思ったんだい、と僕は思った
何度生きることを選んだんだい、と僕は思った
どうしてまだ生きているんだい、と僕は思った

彼女は多分単に、一言も口を利こうとしない私を心配していたのだし
社会的に見て弱者なのは確かに私の方が深刻だったのかもしれないが
私は彼女と生きていこうと思ったことをついに誰にも話さずに済んだ


僕はそれを知らない
知らないまま大人になった

誰かを愛し続けることは世界との約束なのだ
愛が存在することを証明しなければ
僕らは人を殺すしかなくなる

学校から帰った僕に物を投げつけて怒鳴った母を
臆病で離縁すらせず僕をせせら笑った父を
私に気付きすらしなかった兄弟を

あるいは彼らに代わる誰かその辺の人を、
その日朝ごはんを食べなかったからイライラしていた
その程度のとんでもないとばっちりで殺すかもしれない

それが憎悪だ

証明
それがあると信じることは
神様を信じることに似ているのかもしれない

僕は愛を証明しようとしている
自分の人生の全てをそれに賭けてもいい

きっと彼女の傷も癒える
父の、母の、兄弟の、あなたの傷も

癒える

投稿者

神奈川県

コメント

  1. とても複雑。だから慈しむ愛もあるのかな
    作品とは直接関係ないけど容疑者xの献身の
    主人公に留置場で天井を見て笑ったあとに
    詩を書いてもらったらこんな感じなのかな
    と、感じがしました。過去の思い出として

  2. あくまでそれらのことは、あくまでわたくしごとであると、いくらかの心臓、いくらかの草の実が言う、おいそれとは、自己の語りは、天には届かない、しかしそれでも、草の葉は語り、草の実は聞く、雨の日でも。

  3. @足立らどみ
    結局の所、家族殺しこそ結婚の契機である、
    というだけのことかもしれません。
    私は繰り返されている戦争が、心底悲しくて、
    本当はもっと別の世界があったんじゃないか、
    と唆す悪魔の甘言でさえ、
    信じたい気持ちでいっぱいです。
    人ってこういう時に騙されるものなんですよね。

  4. @坂本達雄
    聞こえない声で歌い、誰も見ないダンスを踊る、
    私のことを月も知りません。
    だからといって、夜の闇が恐ろしくなるわけでも、
    朝の光に怯えることもないのが、強さです。

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